角質層のバリア機能におけるセラミドの役割
(Journal of Investigative Dermatology (2005) 124, 786–792)
Tヘルパー1(Th1)とTヘルパー2(Th2)のサイトカインが
セラミドにどのように作用するかを調べた論文になります。
免疫系において、Th1とTh2のバランスは非常に重要で、
このバランスが崩れると疾患を引き起こすと言われます。
Th1は細菌やウイルスなどの外部からの侵略者に対して働き、
Th2は元々は対寄生虫用の免疫システムでしたが、
今では仮想敵を作って仕事をしています。
その結果がアレルギーやアトピー、喘息などとして現れます。
簡単にいえば、Th1とTh2は互いに拮抗し、
Th2が強すぎる状況がアレルギー体質を引き起こすというわけです。
炎症部でhセラミド産生が抑制され、セラミドの分解が促進される
ことが分かっていますが、Th1およびTh2サイトカインのバランスが
関与しているというわけです。
Th1のサイトカイン TNF-α(腫瘍壊死因子)IFN-γ(インターフェロン)が
セラミダーゼ(セラミド分解酵素)、スフィンゴミエリナーゼ(セラミド合成酵素)、
グルコセレブロシダーゼ(セラミド合成酵素)の発現にどのような影響を与えるか調べた結果、
セラミダーゼは抑制、スフィンゴミエリナーゼ、グルコセレブロシダーゼは促進しました。
一方、Th2のサイトカイン IL-4(インターロイキン)はグルコセレブロシターゼの発現を
有意に抑制しました。
スフィンゴエミリナーゼに関しても抑制的に働きますが、有意な差は見出せませんでした。
また、Th1のサイトカインの影響を抑制するため、
Th1のサイトカインと、Th2のサイトカインが同時に存在した場合は。
セラミド関連酵素の反応は、何もない状態と変わりなくなります。
つまり、Th1もTh2もどちらも炎症を起こしますが、
Th1優性下での炎症はセラミドの産生を促進し、
Th2優性下ではセラミドの産生が抑制されるというわけです。
そして、アトピー性皮膚炎ではセラミドの著しい減少が見られ、
セラミドによる肌バリア機能の低下がアトピーの原因である
といわれきました。
(バリア機能が弱いから、アレルゲンが侵入しやすい、乾燥するから、痒みが出るなど)
しかし、順序は逆で、Th2サイトカインの影響により、
炎症作用が起き、結果セラミドが減少していくのではないか?と。
セラミド減少がアトピーの直接的原因ではないが、
セラミド減少がアトピーの慢性化に影響しているという可能性が示唆されたわけです。
セラミドがアトピーに有効であることは確かですが、
炎症下ではなかなか結果がでにくいのは、
足しても、分解されていくためであり、
セラミドを塗布する場合、薬で炎症を抑えてからの方が
効果が出やすくなるというわけです。
また、アトピー改善は免疫、つまりTh1とTh2のバランスを
整えてあげることが重要になってきます。
バランスと整えるに有効な方法としては
①ω-3系のオイルを取る
ω-6系の脂肪酸の過剰摂取は、アラキドン酸カスケードを引き起こし、
炎症作用を助長します。
このω-6に拮抗的に作用するのがω-3であり、
不足しがちな成分なので、積極的にとっていきたい成分です。
亜麻仁油、エゴマ油、青魚(DHA、EPA)などに含まれます。
ただ、ω-6も必須脂肪酸ではあるので、
ω-6脂肪酸を避けると、別の弊害が盛りだくさんなので、
注意してください。
②腸内環境を整える
腸内がキレイな人は、お肌もキレイと言われますが、
もしかしたら、Th1とTh2のバランスが取れて、
セラミド合成がちゃんとできているからなのかもしれませんね。
アトピーと腸内環境の関連性は昔から言われている話です。
基本的なところは乳酸菌、発酵食品、キノコ類を取ると良いとされます。
③ストレスを溜めない
免疫系、内分泌系、神経系は密接に関わりあっています。
神経系の異常、つまりストレスは免疫系に影響を与えます。
現代社会でストレスを感じるな、というのは無理な話し、
性格的なものもあるので難しい問題ですが、
自分なりのストレス解消法を見つけるとか、
睡眠をしっかりとるとかして、対応しましょう。
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