スーパーバグ

イギリス政府が衝撃的なことを公表しました。

なんでも、2050年までに抗生物質に耐性のある菌による伝染病が流行し、

3秒に1人が死ぬような事態が起こりうるとのこと。

スーパーバグについてはどっかで書いたっけ？

書いたよう、ないような・・・

スーパーバグってのは多様な抗生物質に耐性をもった細菌のこと。

耐性菌については昔から言われていたことです。

抗生物質を乱用すると、耐性菌が生まれる。

今までに色々な抗生物質に対して耐性菌が出てきているわけですし。

たまたま耐性を獲得した菌が突然変異が生まれるわけですが、

その菌以外は死んでしまいます。

つまり、耐性菌しかいない状況になるわけです。

その耐性菌が生まれた場合、耐性菌が増えるのは必然です。

ただ、とっておきの抗生物質があり、

どんな耐性菌も、これなら確実に死ぬってのがあったわけです。

その人類の切り札がコリスチンという抗生物質。

ぶっちゃけ副作用の多い抗生物質ではあるのですが、

グラム陰性菌に対しては絶大な効果を発揮します。

で、近年、このコリスチンに対する耐性をもった菌が中国で見つかったと

話題になりました。

なんでも豚のエサにコリスチンを混ぜて食わせているそうです。

今も現在進行形で行われているわけですが、

人類の砦といわれている抗生物質を家畜のえさに混ぜるってはどうなんよ？

と思わなくもないです。

豚の大量死がちょっと前に中国でありましたが、

それからなのか、それ以前からなのか・・・

それ以前であれば、その時にスーパーバグはできていたのかもしれませんね。

現状、家畜には抗生物質を与えられている場合が多いです。

豚に限らず、牛や鶏なんかもね。

それを食べ続けていることは、抗生物質漬けの肉を食べるようなものですから、

体内でも耐性菌ができる可能性があります。

また、体に抗生物質に対する耐性ができてしまう可能性もあります。

薬を飲み過ぎると効かなくなるって話は聞いたことあると思います。

さらに、面倒なのが細菌はプラスミドという少量のＤＮＡ情報を

通常の染色体とは別にもっています。

これらは生命維持とは別に持っており、

耐性とか毒性とかを付与します。

例えばＯ-157　食中毒の原因となる大腸菌ですが、

プラスミドにペロ毒素をコードしており、この毒素のために

症状がひどいことになるわけです。

で、このペロ毒素のＤＮＡをどこから得たのかというと、

ペロ毒素を作るたの細菌からなんです。

細菌は死骸からＤＮＡ情報を取得することができるわけで、

それを可能としているのがプラスミドってわけです。

つまり、耐性菌がでてきたっても、その菌が直接人を害するわけではないのですが、

その耐性遺伝子を他の菌が獲得する可能性がでてくるというわけ。

万が一、強力な伝染病にその耐性遺伝子が付与した場合、

人類の脅威となり、なす術がないという事態になりかねないってのが

今回の発表につながったということですね。

年間1000万人規模で死者がでるような伝染病が流行ったら、

手術等のリスクが跳ね上がるうえ、出産にも多大な影響を与えると予測されています。

さらに病院機関の機能そのものが停止してしまい、処置不能になる事態になることも

考えられます。

耐性菌の多くは病院で見つかっています。

幸い、病院は閉鎖的な環境なので、封じ込めが簡単ですが、

中国で起きた家畜で見つかったという事態は封じ込めは

容易ではなく、正直、すでに広がっている可能性すらあります。

（抗生物質の使用を規制しないと、世界中に広がるとの警告は多くの科学者から指摘されています）

もしかしたら、すでに手遅れかもしれませんが、

対策として10項目を掲げ、推奨しています。

・抗生物質の乱用を世界的な一般認識として広めるようなキャンペーンを行う
・衛生面の改善と伝染病の防止
・農業で抗菌剤を使用することを止める
・薬剤耐性菌を監視するための体制を世界的に改善する
・抗生物質を使用すべきか否かを素早く診断するための新しい方法の奨励
・抗生物質の代替となる治療法や、ワクチンの奨励
・感染症の専門家を支援すること
・抗菌剤と耐性菌に関する研究を行うための世界的な組織を設立すること
・新薬の開発を奨励
・世界連合を組織すること

細菌と抗生物質の戦いはイタチごっこで、

一応は人類のほうが優位に進めてきたわけですが、

ここにきて、雲行きが怪しくなってきたってわけです。

なんせ、切り札を手札から失ったわけですからね。

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