アトピーの新薬デュピルマブ

297人が90%改善

デュピルマブ(dupilumab)について、2年くらい前に

重度のアトピーに対しての有効性が確認されていましたが、

このたび、ヒト試験の結果が発表されました。

医学誌『New England Journal of Medicine』に掲載されています。

 

対象者は中度~重度のアトピー患者で、従来の治療ではなかなか改善しない人を集めたのだとか。

  • 有効成分を含まない偽薬の注射を毎週打つグループ
  • 1週ごとにデュピルマブと偽薬の注射を交互に打つグループ
  • 毎週デュピルマブの注射を打つグループ

の3つのグループにわけ、16週間の期間行われました。

 

 

まあ297人が症状が90%近く改善した・・・とありますが、

これはあくまで全体の3~4割程度で、すべての人がって話ではないです。

それでも、従来の塗り薬では何ともならなかった、重度のアトピーが

これだけの高い割合で改善したってのは、すごいことだと思います。

 

1000人近いサンプル数なので、データとしての信憑性も高いです。

 

面白いのは偽薬でも改善しちゃっている人がいるんですよねー

1割くらい(笑)

 

人の思い込みの力は意外にすごいのかもしれませんね。

 

 

ちなみに副作用も報告されており、

注射部位が赤くなるというのと、結膜炎が起こる頻度が高いとのこと。

 

デュピルマブによりアトピーの症状が悪化した・・・ってことはないみたい。

 

治療困難になったアトピーの改善に、この新薬への期待が高まってきたわけっす。

 

 

デュピルマブってのは何かってのを改めて述べておきますが、

一言でいうとモノクローナル抗体のことです。

 

抗体とは、体内の異物に特異的にくっ付き、

体内の免疫に攻撃対象として知らせるものです。

 

病原菌の数だけ、体内の抗体は存在しており、

病原菌が体内に侵入してくると、免疫細胞が抗体を作り、

攻撃するってわけです。

 

花粉症も花粉に対して抗体ができてしまったがために

起こる症状なんですよ。

 

 

この抗体を人工的に作ったものが、モノクローナル抗体。

「モノ」は単一という意味

「クローナル」は混じっけのないという意味。

 

そして、この抗体の攻撃目標は、

インターロイキン4受容体αサブユニット(IL-4Rα)とのこと。

免疫反応を促進するシグナルの受容体を壊して、

過剰な免疫反応を抑制するというわけ。

 

 

問題は、これが根治療法になりうるのかって話です。

どう考えても、対処療法ですけどね。

 

強力なステロイドを塗れば、症状は一時的に治まります。

しかし、ステロイドの効果が切れれば、すぐに再発し、

場合によっては症状が重度化します。

 

このデュピルマブはどうなんでしょうね?

この注射をやめても、再発しない?

それともステロイドと同じで、再発する?

 

しないのであれば、画期的な薬となるでしょうが、

打ち続けなければいけないってなると・・・

 

いわゆる免疫抑制剤ですからね。

長期服用はこれらと同じ副作用が出てくる可能性があります。

感染症にかかりやすくなるとか・・・ね。

 

この実験の被験者のその後が知りたいところではありますが、

近い将来、薬としてお目見えする日も近いんでしょう。

 

 

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コメント: 4
  • #1

    しの (金曜日, 28 10月 2016)

    …やはり免疫抑制剤でしたか。
    最近、あらゆる分野まで適用範囲を広げていってますね。
    免疫を抑制して元気になる生き物なんて居ませんから渋い気持ちになります。
    本当に、その後が知りたいです。
    生身の人間にとっては、そっちのデータの方が大事ですよね。
    でも、その情報がない事にすぐには気付きませんね。
    目立たせたいデータだけ見てその気にさせられてしまうと、
    気づかないまま進んでしまう所が人間にはあるなぁと感じました。
    冷静に注意深く分析しないといけませんね。

  • #2

    森崎 (金曜日, 28 10月 2016 23:17)

    コメントありがとうございます。
    これで治ればいいのですが、免疫抑制だと難しいかもしれませんね。しかも注射になるので、小さいお子様の場合は酷な話になるかもです。この手の報告って、後日談が語られることは少ないてすが、良い報告があることを期待したいところです。

  • #3

    しの (土曜日, 29 10月 2016 17:20)

    そうなんですね。
    小さなお子さんには将来的に心配でもあります。
    なるべく可哀想な事はしたくないものです。

    そして、改善が認められなかった7〜6割の多くの方は
    アトピーの悪化は見られなかったものの
    免疫抑制剤の害は体に残るのですから
    こちらもその後が気になります。
    治験中も副作用とか大丈夫だったんですかね。

    よくないデータは余程でなければ出てこないと思います。
    実際に受ける側の人間は、その点も踏まえて覚悟が必要ですね。
    新薬への期待は私もありますけど^ ^

    森崎様の注釈がなければ、効果があったのは千人のサンプルの3〜4割って事も理解できなかったと思います。
    9割の改善って言葉が、あまりにもセンセーショナルで。
    何でもそうですね^ ^

    >偽薬でも改善しちゃっている人がいるんですよねー
    1割くらい(笑

    こっちの方が何だか私には微笑ましく、可能性すら感じたりします^ ^

    下手に免疫を下げて反応ができなくするより、良い素材が自然界にありそうな気がしますけれどね!
    個人的に新薬もありがたいですけど、
    もしかしたら制約の少ない(利権の少ない)
    食べ物やエキス剤とかの方が本当の意味で
    免疫の正常化を促すことができるんじゃないかな?

    以前森崎様のブログで紹介された、老化の遺伝子の鍵をオンにしてしまうという話がありましたよね。
    それを防ぐ成分があると。
    とても目が醒めるような感動をしたのを覚えています。
    要らない遺伝子オンって、意外とあるのかもしれません。
    要らないものや悪玉菌やウィルスを排除して
    正常な免疫力を取り戻せたら、アレルギーはなくなるんじゃないですかね^ ^

  • #4

    森崎 (日曜日, 30 10月 2016 23:56)

    どうしても、儲かるかどうかってのが関わってきますからね。簡単なもので、完全に治るってのが都合が悪い人もたくさんいるので…
    個人的には発酵食中心の食生活すれば、だいたいのアレルギーは治ると思ってはいるんですけどねー