グルコシルセラミドが蓄積すると・・・
九州大学は4月4日、グルコシルセラミドが、ミンクルという免疫受容体に結合し、
免疫系を活性化する役割があることを発見したと発表しました。
この研究は、同大生体防御医学研究所、大阪大学微生物病研究所の山崎晶教授らの
研究グループによるもので、研究成果は「Proc. Natl. Acad. Sci. USA」オンライン版に
4月3日付けで掲載されています。
免疫系は、外来からの病原体のみならず、自己の細胞が障害を受けた際にも活性化し、
損傷部位を取り除くはたらきを担うことがわかっていました。
ただ、この細胞死を何をもって認識しているのかってのは謎でした。
ミンクルと呼ばれる免疫活性化受容体は、病原菌の脂質を認識していることから、
なんらかの脂質であろうとの仮説に基づき、成分を同定した結果、
グルコシルセラミドであったとのこと。
グルコシルセラミドはセラミドにグルコースが結合したもので、
糖脂質の一種です。まあ、水に溶けるんですけどね。
植物セラミドはほぼ、グルコシルセラミドです。
グルコシルセラミドは細胞内に存在していますが、
細胞の損傷により、放出され、これが免疫系の活性に
つながるのだそうです。
グルコシルセラミドは、生体内で蓄積するとゴーシェ病やパーキンソン病を
引き起こすことが知られている・・・そうな。
ゴーシェ病はグルコシルセラミドが蓄積ってよりも、
グルコシルセラミドをセラミドにする酵素が不足しており、
それに伴いグルコシルセラミドが肝臓や脾臓に蓄積することで、
色々な症状を引き起こすって病気。
世界的に見ても5000人くらいと、稀な病気です。
薬が非常に高価で、治療困難なため、特定疾患に認定されています。
パーキンソン病は神経疾患と考えられており、手足が自由に動かせず、
言葉もうまく話せなくなるなどの症状が特徴的。
薬の飲み過ぎによる害でも同様の症状が起こり得ますが、
この場合は薬を減らしていくことで症状は改善されます。
こちらもグルコシルセラミドが蓄積することで引き起こされるというより、
神経系でも重要な働きをしているセラミドを作ることができず、
結果としてグルコシルセラミドが蓄積しているのではないかと思われます。
しかしながら、グルコシルセラミドが蓄積することで、
免疫が過剰に活性化するのは間違いなく、
これによる炎症が悪化し、疾患を引き起こしているという側面はあります。
で、1つの治療法として、グルコシルセラミドを感知するミンクルをブロックする
阻害剤を作ることで、治療困難であるこれらの疾患の治療に役立てるのではないか?
という期待が寄せられています。
グルコシルセラミドを取り過ぎると、病気になるように思われかねない内容ですが、
特にそのようなことはないです。
問題は、セラミドの生合成に関わる部分の欠損によりものなので、
心配しなくても大丈夫です。
ただ、化粧品として塗布する場合、
免疫系を活性化してしまう可能性があるので、
肌荒れ、アトピーなどにはグルコシルセラミドは適切ではないかもしれませんね。
特にデータがあるわけではないので、何とも言えませんが、
すでに炎症がある場合は、炎症を悪化させてしまう可能性はなくはない
のではないか?と。
もちろん、通常時であれば何も問題はないんですけどね。
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