九大、セラミドの挙動を観察できる蛍光分子の開発に成功
九州大学大学院理学研究院の松森信明教授の研究グループによって、
セラミドの細胞膜中での動きを「ありのまま」に観察できる蛍光分子の開発に
世界で初めて成功したそうです。
セラミドといえば、肌のバリア機能に重要な成分として知られていますが、
まあ、それだけではなくて、全身に存在する成分です。
細胞膜に存在したり、シグナル伝達物質として神経細胞周辺にも多く存在します。
アポトーシス(細胞自然死)にも関わっており、癌治療など分野でも注目されています。
特に細胞膜内での挙動は従来の蛍光マーカーを入れたセラミドでは、
セラミドの炭素鎖の部分に蛍光基が導入されており、これが脂質膜を乱してしまうため、
セラミドの豊富な膜領域に分布できません。
どういうことかというと、疎水基に親水性の高い蛍光基がくっついているので、
単体で活動してるセラミドの動向は追えるけど、セラミドが密集している部分、
まあ、ラメラ構造とか取る場合、蛍光基が邪魔して油分に溶けない状態になってしまうってこと。
で、それが可能となったって話です。
セラミドの頭の部分に親水性のリンカーを介して蛍光基を導入することで、
新しい蛍光セラミドを開発しました。
つまり、セラミドの親水基の部分にマーカーをつけたことで、
セラミドの活動を邪魔しないものができたってわけ。
これにより、細胞膜内でのセラミドの挙動をありのまま観察できることが可能となり、
細胞内でのセラミドの機能解析につながる重要なツールとなると期待されます。
何が凄いというと、図を見てもらうとわかるのですが、
セラミドにえらいデカいリンカーをぶっこんでいるってこと。
グルコース(糖)がくっついただけで、セラミドの性質が変わってしまうのに、
こんなのくっつけて、セラミドの挙動を維持しているという信じがたい事実。
常識的に考えればあり得ないと思ってしまうことですが、
常識にとらわれない柔軟な思考の賜物だと思われます。
個人的には、これでセラミドの機能性を維持しているのが信じられないくらいです。
こちらの研究成果は、平成31年1月4日(金)に、米国学術誌「Langmuir」のオンライン版で公開されています。
Preparation and Membrane Distribution of Fluorescent Derivatives of Ceramide
肌でセラミドは細胞間脂質でラメラ構造を構築し、
外部からの刺激に対するバリア機能と、内部の水分蒸発を防ぐ
保湿効果を担っていることは明らかになっています。
しかしながら、塗布されたセラミドがどのような挙動をしているかってのは
よくわかっていません。
なんせ、従来の蛍光セラミドでは、セラミド豊富領域である
細胞間脂質では機能しないわけですから。
もしかしたら、塗布したセラミドが肌に定着するか否かって話に
決着がつく日は近いのかもしれません。
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