液体のりで造血幹細胞を培養!!?

液体のりが白血病治療の革命を起こす

市販「液体のり」、白血病治療の救世主に? 専門家驚嘆

 

白血球の治療に造血幹細胞が必要ですが、これを培養して増やすのは非常に困難だったわけです。

それこそ数万円/kgするような無駄に高い培養液を利用しても、僅かしか増やせない。

 

そんな中、東大とスタンフォード大などの研究チームが、

造血幹細胞を大量に培養することに成功したって話が5/30にあったわけです。

まあ、ちょっと小難しい話なので、普通は話題にも上がらないはずだったのですが、

なんと造血幹細胞を市販の液体のりで培養できたってことで、

大きな反響を呼んでいます。

 

誰もが一度は使ったことがあるアラビックヤマトという液体のり。

これでも培養が可能だったというわけ、あの糊がそんなに凄いかったのか!

と言う感じで話題になったわけです。

 

正確にはポリビニルアルコール(PVA)と言う成分が重要で、

医薬品グレードの高純度のものが存在するので、実用レベルでアラビックヤマトが

使われるわけではないです。

ポリビニルアルコールは洗濯のりや液体のりの主成分であるので、

話題性を出すために、あえて市販のものを試したらうまくいったという話。

試みは成功して、アラビックヤマトの株価が凄いことになるのでは!?みたいな話も

でています。(そもその上場していないので買えませんけどね 笑)

 

ポリビニルアルコールで培養した結果、幹細胞を数百倍にすることができたそうな。

培養した幹細胞はマウスに移植後、正常に白血球などが作られることも

確認されています。

 

今までは培養してもちょっとしか増えなかったのが、

数百倍増えるようになったわけです。

培養液のコストも下がっていますので、

いままでよりも大規模な培養も可能となります。

 

白血病の治療はドナーからの脊髄や臍帯血の移植を待つしかなかったわけですが、

ご存知の通り、適合者は非常に低い確率でしか見つかりません。

で、自分の適合者が現れるまで順番待ちをしている状況なわけです。

 

しかし、今回の研究によって、1人のドナーから複数人の治療が可能となる

かもしれないってわけ、より多くの命が救われるかもしれないんです。

 

まさに白血病治療に革命を引き起こすくらいの、

画期的な発見なんですよ。

 

 

にしても、なんで液体のりで培養しようと思ったのか、

その過程が気になるところ。

記事だけみると、なんかヤケクソで液体のりで培養したら

上手くいったみたいな印象を受けますが、そうではないようです。

 

まず、なんで上手くいかないのかという原因を追究した結果、

細胞培養で使われている、ウシ血清成分やアルブミンが造血幹細胞の安定的な未分化性を

阻害していることを突き止めました。

 

しかし、アルブミンのようなタンパク質を培養液に加えないと、

造血幹細胞の細胞分裂が誘導できないことが問題となります。

幹細胞のままで維持したいけど、たんぱく質がその邪魔をする。

かといって、たんぱく質を抜いたら細胞が分裂しない・・・と。

 

たんぱく質を含まないが、幹細胞が増えるようなものをってことで、

手当たり次第調べた結果、ポリビニルアルコールに白羽の矢が立ったわけです。

まあ、そこには数えきれないくらいのトライ&エラーの末ってことだと思われます。

 

 

論文は30日に英科学誌ネイチャーに掲載されています。

概要はプレスリリースのほうが分かりやすいかな。

 

 

この研究結果で、白血球治療だけに留まらず、

幹細胞医療全般にも大きなインパクトを起こすかもしれませんね。

 

 

<<<前           次>>>