保湿と抗炎症機能に関連した物質
福井大病院の皮膚科医、宇都宮慧氏と長谷川稔氏らによるの研究チームが、
皮膚の表皮の細胞から分泌されるタンパク質の一つデルモカインに、
水分を皮膚の表面に保持するためのバリアー機能と、肌の炎症を正常に戻す二つの機能が
あることを突き止めたとの発表がありました。
デルモカインとは、2004年に発見されたタンパク質。
見つかったばかりで、生体内での働きはよく分かっていませんでした。
デルモカインは表皮上層に恒常的に発現する50KDaくらいの分泌タンパク。
乾癬などの炎症を伴う皮膚に沢山分泌されています。
遺伝子操作でデルモカインの遺伝子を壊したマウスを作成したところ、
生後数日は軽度の鱗屑が生じたが、成長と共になくなり、皮膚バリア機能への
異常は確認されなかったそうです。
つまり、デルモカインが乾癬の原因ってことは否定されたわけです。
ただ、皮膚の免疫を刺激する物質を塗って乾癬の症状を誘発させた結果、
欠損マウスでは初期の段階から炎症が強く出たのに対し、
野生種のほうが炎症が軽かったそうな。
つまり、デルモカインに炎症を抑える作用があるってのが確認されたわけです。
in vtroでは欠損マウスではELR+CXCケモカイン産生が向上したという結果が出ています。
これは好中球の遊走を引き起こし、炎症させます。
炎症を抑える仕組みとしては、ELR+CXCケモカイン産生を抑制することで、
好中球の活性を抑えた結果になると推測されます。
ただ、乾癬の炎症部でデルモカインが多くみられるってことは、
それを治そうとして、デルモカインが産生されるってわけで、
にも拘らず、デルモカインの遺伝子が欠損していなくても、
乾癬になる、また治りにくいってことは、他にも要因があるってわけ。
で、欠損マウスでは、セラミドが減少することも発見されました。
減少のメカニズムは不明ですが、これが乾癬に関わってきているって
ことになるのだと思われます。
見た目は野生種との差はなかったのですが、欠損マウスはセラミドの量は少なかった・・・
セラミドが少なかったから、炎症誘発の際の反応の差がでたって考えるのが自然かと。
乾癬ではセラミドについては、CerNDS、CerNH、CerNP、CerAH、CerAP、CerEOS、
CerEOH、CerEOPが顕著な減少しており、逆にCerNSとCerASの顕著な増加が確認されています。
アシルセラミドをはじめ、長鎖脂肪酸をもったセラミドが減少しており、
角質化の異常が確認されています。
これは炎症によるセラミダーゼの活性化、突貫工事でバリア機能を回復させようとするため、
未成熟な角質層ができる結果だといわれています。
デルモカイン欠損マウスでは、炎症を止めるためのデルモカインがないため、
炎症を早期に抑える方法がなく、炎症が長引き、結果としてセラミドが減るのではないか
と思われます。
乾癬に関しては、セラミドの塗布の有効性ってなデータがあったと思いますが、
デルモカインと併用すれば、さらに効果的なのかもしれませんね。
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