セラミドアナログ
疾患の要因となる“糖鎖”を認識する抗体を作るための化合物を開発
なかなか興味深い発表が、産総研からありました。
新規ワクチンの開発へとつながることもあり、タイムリーな話題です。
糖鎖ってのは、文字通り糖が鎖のように連続でつながっているものになります。
あらゆるところに存在し、すべての生物が持っていると言っても過言ではないです。
どこにでもある成分なので、これを標的とした抗体ってのは体内で作られにくいです。
自分の体の中にあるものに免疫が反応するってのは、色々面倒ですからね。
リウマチは自身の免疫が自身を攻撃で起こる病気ですが、
糖鎖にイチイチ反応していたら、そのようなことが起こりやすくなります。
ただ、特異的な糖鎖というものがあり、それをターゲットに抗体を作れれば、
非常に有用であるわけです。
例えば、ガン細胞特異的な糖鎖に対して抗体が作れれば、
ガン細胞だけを攻撃することが可能となります。
ウイルスにも糖鎖は存在しており、ここは変異しづらいので、
糖鎖を標的として、抗体を作れれば、有効性の高いワクチンになり得ます。
インフルエンザウイルスは変異しやすいので、打ったワクチンが
効果を発揮するかどうかは五分五分なんです。
それがほぼ100%効くようになるってわけ。
一方で、炎症部の細胞が合成する糖脂質に強い免疫応答を引き起こす作用がある
ってことを発見しており、その糖脂質の脂質部分に免疫を刺激する構造的特徴を同定したわけです。
それを模倣して、人工糖脂質を作ることに成功したってお話しなわけであります。
で、この人工糖脂質は、セラミドに似た構造をしており、セラミドアナログと呼ばれます。
長鎖脂肪酸を持つ構造が特徴となります。
で、このセラミドアナログと標的の糖鎖を結合させることで、
この標的の糖鎖の抗体の産生を促進することができると。
まあ、簡単にいえば、
・病気の要因に特異的な糖鎖がある
・その糖に擬似セラミドを結合させた人工糖脂質の合成に成功
・この人工糖脂質を体内に入れると、その糖鎖の抗体ができる
ってな感じ。
コロナウイルスの特異的な糖鎖を見つけることができれば、
そのワクチンを容易に作ることが可能になるっていう技術といえば
分かりやすいかな?
まあ、その特異的な糖鎖を見つけ出すってが大変ではあり、
その糖鎖を合成することは、さらに難しいんですけどね。
今後の課題としては、特定の糖鎖を大量に生産できるようにすること
なんだそうです。
この糖鎖ってのは、今最もホットな研究分野で、
今後、新薬、ワクチンなどの開発に大きく関わってくるんじゃないかな?
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