T細胞に侵入するとの研究発表
4月7日、「Cellular and Molecular Immunology」に掲載されたものになります。
SAES-CoV-2っては、今世界を騒がせている新型コロナウイルスになります。
タイトルを直訳すると、新型コロナウイルスはスパイクタンパク質によって、
膜融合を起こし、T細胞に感染するとなります。
スパイクってのは、コロナウイルスの特徴で、これが王冠みたいだから『コロナ』と
呼ばれているわけです。まあ、表面に突起物が沢山あるあれがスパイクになります。
で、T細胞ってのは免疫の司令塔になる免疫細胞。
SARS-CoV-2はβコロナウイルス属に属し、SARS-CoVと79.5%の同一性があります。
20%も異なるってことは、もはや別物と考えて差し支えないかな?
SARS-CoV-2は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の受容体を主な感染原として使用します。
SARSにはT細胞への感染能力はなかったのですが、MARS(中東呼吸器症候群)ウイルスには
T細胞に感染し、T細胞を殺す作用があるそうな。
ただ、HIVのようにT細胞に感染し、そこで増殖するってことはできず、
あくまでT細胞をアポトーシスを介し、死に追いやるとのこと。
感染した細胞はもはや異物なので、自浄作用で処理されるといった感じです。
そして、同じような特性が新型コロナウイルスにもあるかも・・・という内容です。
実際にT細胞に感染させたところ、感染力は主経路となるACE2と比べると、
1/3程度ではありますが、確かに感染力を示したとのこと。
同様の実験をSARSウイルスで行ったところ、ほぼ感染力はなく、
大きな有意差がでたとのことです。
電子顕微鏡で、T細胞の細胞膜と新型コロナウイルスが融合するしているのが
確認されていますが、細胞内にRNAを入れ込んでいるのかは不明。
増殖できていないので、おそらくRNAの注入まではできていないのではないかと。
ウイルスは基本的に手当たり次第に、侵入を試みるわけで、
今回はT細胞に良い線までいっているけど、感染はできなかったと。
実際には感染しているわけではないと思われます。
ただ、浸食されそうになったT細胞は使い物にならないので、
アポトーシスやオートファジーで処理されることになるわけです。
この論文を目にした人は、新型コロナウイルスに感染すると、
免疫が破壊され、なす術なく、ウイルスにやられてしまう・・・
というイメージを抱きがちですが、そういうわけではないです。
免疫不全を起こすHIVはT細胞で増殖し、さらにT細胞へと感染を拡大するのに対し、
コロナウイルスはT細胞を1個、道連れにするだけです。
自爆したウイルスの情報も、しっかり入手しているわけで、
通常は抗体ができるまでに、押し切られるってことはないです。
ただ、通常じゃない場合は、非常に厄介なことになる可能性があり、
高齢者や持病を抱えている人は重篤化しやすい原因の1つは、これだと思われます。
また、解熱剤などの服用すると、免疫の働きが抑えられ、
その間にウイルスが増殖してしまう、数の暴力で押されてしまうため、
服用を避けるべき薬が存在するのだと思われます。
逆にこの特性を活かして、ウイルスのスパイクに親和性の高いペプチドを
血中に増やしてやれば、感染を予防できるのではないか?
という方向での研究が進められているとか。
近い将来、●●を食べるとよいってな話がでてくるかもしれませんね。
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