擬似セラミドは浸透する?しない?
ちょっと面白い論文を見つけたのでご紹介。
擬似セラミドからなる高含水α-ゲルが肌上に形成する擬似細胞間脂質膜
2012年に化粧品技術者会誌に掲載されたもので、
花王による研究成果となります。
内容はタイトルのまんまなんですが、肌上に擬似細胞間脂質膜を
形成するゲル剤の開発に成功したって話。
擬似セラミド、高級アルコール、モノアルキルグリセリルエーテルの混合物が、
肌上で細胞間脂質のようにラメラ構造をもったバリア層を形成することができたと。
擬似セラミドは花王の十八番、ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミド。
まあ、擬似セラミドと呼ぶことを避けているのですが、研究段階では擬似セラミド
って言っちゃってるのが面白いとこです。
ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドは
セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドの簡略名となります。
つまり、同じ物ってこと。
この3種の混合物に擬似スフィンゴシン、
1-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-3-イソステアリルオキシ-2-プロパノール
を加えることで透明なゲルを作ることができるそうな。
こちらも花王の独自原料となります。たぶん、別名があると思います。
何かはわからんけど・・・
擬似セラミドは浸透するのかどうかって話があるわけですが、
この研究発表では、肌上で擬似セラミドが擬似細胞間脂質膜を
形成するといっているわけです。
まあ、このゲル剤が特殊なのかどうかって問題はありますが、
個人的には肌上に擬似細胞間脂質膜を作れるってのはメリットしかない
と考えています。
まず、ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドは
セラミドNGを模したものですが、あくまで似ているものであって、
ヒトの肌にあるセラミドとは異なります。
仮にこの擬似セラミドが肌の細胞間脂質でラメラ層に入り込んだとすると、
これは異物になるわけで、望ましいものではないです。
もちろん、スカスカな状態よりは、何か突っ込んでおいたほうがマシではありますが、
本来のバリア機能と比較した場合は、明らかに劣ることとなります。
つまり、肌に浸透しないってのは、それだけでメリットなわけ。
また、浸透しないってことは、炎症部にも刺激なく使えるってことでもあります。
炎症部は各種分解酵素が活性化しており、その1つにセラミド分解酵素があります。
そのため、ヒト型セラミドを入れても分解されちゃうので、セラミドの効果を
十二分に発揮することはできません。
その点、擬似セラミドは分解されることがないです。
で、肌上に擬似細胞間脂質膜を作るってことは、本来の肌のバリア機能とは別に、
1つ余分に高いバリア性の膜を作るってことです。
オイルやポリマーで作る膜とは比較にならない、高い保湿性とバリア性を備えているわけです。
まとめると、
・本来の細胞間脂質のラメラ層の邪魔をしない
・浸透しないので刺激がない
・炎症部でも使用可能
・高い防御力の膜を1つ余分に持てる
ってな感じ。
まー、気になるのはAbstractの最後に、
「擬似セラミドの肌への高い浸透性も確認できた」
と書いてるのが気になるところですが・・・
有意差なくね?
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