新しいアトピー治療になり得るかも?
アトピー性皮膚炎の小児患者の皮膚に、健康なヒトから摂取した皮膚常在菌を
移植することで、アトピーの症状が改善する可能性を示唆する研究結果が、
米国立アレルギー感染症研究所から「Science Translational Medicine」9月9日号にて
発表がありました。
行われた試験は、3~16歳のアトピー性皮膚炎患者20人を対象に行われたもので、
規模としては小規模ではあります。
皮膚に常在しているRoseomonas mucosaと呼ばれるグラム陰性桿菌を単離して
増殖させたものを、砂糖水に混ぜて塗布しました。
はじめの3ヶ月は週に2回、最後の1ヶ月は1日おきに、計4ヶ月の間、
試験が行われました。
表皮ブドウ球菌を移植すると思いきや、Roseomonas mucosaという日和見菌に
着目したってのは凄いな。
面白い話があって、同様の実験をマウスでも行っているのですが、
健康な人からのR.mucosaは改善効果があったのですが、
アトピー患者から採取したR.mucosaでは改善効果がなかったばかりか、
悪化したという結果となったそうな。
その結果は、4ヶ月で20人中17人で湿疹や痒みが50%以上緩和したそうな。
もちろん、副作用なんかもなく、体のどの部位でも効果が確認されたそうな。
さらに、治療終了後も経過観察をしており、8か月後でも移植したR.mucosaが
定着していることが確認されており、持続的な効果が示唆されました。
アトピー性皮膚炎には、肌の常在菌の菌叢の乱れが関与していることは
わかっていましたが、今回の実験もそれを裏付けるものになるとのこと。
日和見菌としてほとんど注目されていないR.mucosaが、
アトピーに関して重要な関連性を持っているってことは、
肌の常在菌に対する認識が大きく変わるくらいの発見です。
今後のアトピー治療への新たなアプローチとして注目されることになるでしょう。
ここで興味深いことが2点あります。
1つ目は、小児アトピーの原因の1つに、肌の常在菌が関与しているとしたら、
どこで何をして、そのような菌叢になってしまったのか?ってこと。
赤ちゃんの腸内の菌叢は、最初はほぼ100%乳酸菌です。
食べるものによって、その菌叢が変化していくわけですが、
肌の常在菌はどうなってるんでしょう?
初期の段階では大きな差はないはずです。
それがどの段階で、何が原因で、菌叢に差がでるのでしょう??
アトピーだと黄色ブドウ球菌の割合が増えることがわかっていますが、
なぜ、そうなったのかってのはよくわかってないんですよ。
しかも、このR.mucosaに関しては、健常者も患者もどちらも存在しているにも拘らず、
健常者のR.mucosaは肌を健全に持っていく作用があるのに対し、
患者のR.mucosaにはそのような作用がないってわけです。
いったい、どこでこの差が生まれたのか。
非常に興味深いです。
2つ目はこのR.mucosa以外にも、有用な菌が日和見菌として扱われている
可能性があるってこと。
腸内細菌も昨今では特定の菌が重要なわけではなくて、
菌叢全体で評価しないと、よい腸内環境かどうか判断できない
ってことがわかってきています。
いわゆる善玉菌と呼ばれる表皮ブドウ球菌以外にも、
肌にとって重要な働きをしている菌がいて、
それらのバランスが非常に重要なんじゃないかと。
今後、新たな菌の効果が発見されるかもしれません。
まあ、昨今では他人の便を移植するとか行われているので、
近い将来には他人の肌常在菌を移植するなんて日がくるかもね。
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