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アトピーの痒みのメカニズムを解明される

痒みに対する効果的な薬ができる日は近い?!

富山大学理事/副学長(分子病態検査学講座)の北島勲氏、

佐賀大学分子生命科学講座分子医化学分野准教授の布村聡氏らの

研究グループによる研究発表になります。

 

Periostin activates distinct modules of inflammation

and itching downstream of the type 2 inflammation

pathway

 

要するに、アトピーで痒みを引き起こす原因となるタンパク質を発見し、

痒みを改善する治療薬の候補を同定したよって話。

注目度が非常に高いのか、連日これ関連の記事を目にしています。

 

アトピーに対する薬は近年目覚ましい進歩を遂げているわけですが、

「痒み」に対する治療薬を強く求められているという現状があります。

ぶっちゃけ、何がつらいって「痒み」であって、強い痒みは日常生活だけでなく、

精神面に及ぼす影響も大きいわけです。

 

 

痒みの物質の歴史

皮膚の細胞が作るヒスタミンが痒みを引き起こす物質として、

最初に認知されています。抗ヒスタミン薬は、痒みをコントロールするため

にアトピー性皮膚炎の患者にもよく処方されています。

 

2004年、アトピー性皮膚炎の痒みを引き起こす物質としてIL-31が報告されました。

ヘルパーT細胞が作り出すサイトカインの一種です。

 

2017年、EPAS1というタンパク質が見つかります。

これはヘルパーT細胞にIL-31を放出させるスイッチの役目を果たします。

 

2022年にはNPTX2というタンパク質が見つかり、何度も掻くと

発現され、痒みの神経伝達を強化する作用があり、さらに痒くなるという

悪循環を起こすタンパク質として注目されます。

 

で、今回はペリオスチンというタンパク質が痒みの原因であることを

突き止めたって話なわけよ。

ペリオスチンは2012年にはアトピーの慢性化となる物質として

すでに見つかっていたものです。

 

 

 

 

ペリオスチンを受け取る受容体があって、ペリオスチンが受容体にはまると

神経を通じて脳へ痒みを伝え、掻くという行動をとらせるというのが、

痒みの大まかなメカニズムになります。

 

 

で、ペリオスチン阻害薬により炎症と痒みが軽減したことから、

これが痒みを抑える薬として使えるでないかって話。

ペリオスチン阻害薬はCP4715というもので、抗血栓剤として

明治製菓が開発した薬になります。

メディシノバ社というアメリカの会社が製造、販売の独占ライセンスをもっています。

契約したのが2006年なので、物質特許はすでに切れているんだとか。

 

CP4715は糖蛋白(GP)Ⅱb/Ⅲa受容体と細胞接着分子インテグリンαvβ3の

両方に拮抗作用します。まあペリオスチン受容体を先に塞いでしまうことで、

ペリオスチンの邪魔をするってわけ。

 

メディシノバ社や明治製菓との利権関係がどうなるかはわかりませんが、

すでに存在している薬なので、実用化は早そうですね。

 

 

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