EFEMP2が運命分岐となる?!
コーセーと東京大学医科学研究所との共同研究により、
真皮の線維芽細胞が老化方向に向かうかどうかを調整する遺伝子として
EFEMP2が機能していることを明らかにしました。
簡単にいうと、この遺伝子が細胞の老化に向かうのを
抑えてくれているってこと。
2023年9月に学術論文雑誌「Experimental Dermatology」に掲載されています。
老化、死へのプログラムはいたるところに配置されていますが、
その仕組みの1つが明らかとなったといえるお話。
近年、老化細胞が体内に蓄積すると、その周囲の細胞や組織の老化を促すことがわかり、
老化は感染するなどといわれるようになりました。
この連鎖的老化を防ぐため、老化細胞の発生を減らす手段を見つけようと考えたわけです。
ただ、加齢による細胞変化を評価するのは非常に難しい。
遺伝的な違いはもとより、性別、年齢でも発現する遺伝子は
大ききことなるほか、紫外線暴露の度合い、飲食習慣などの生活習慣でも
大きく変わってきます。
長寿遺伝子を活性化させるといわれるレスベラトロールも
サルまでの動物実験ではきれいなデータが取れるのに、
ヒト試験ではポジティブなデータがなかなか取れないってのと
似た感じなんでしょう。
そこで同一人物の真皮線維芽細胞を使うことで
運命分岐となる遺伝子の同定を試みたわけ。
この同一人物からとれた線維芽細胞を遺伝子発現パターンから
4つに分類します。
①増殖性の高い細胞
②細胞外マトリクスの産生が多い細胞
③老化細胞
④老化状態にない細胞(その他の細胞)
当然といえば当然の話ではあるのですが、
加齢に伴い老化細胞が増え、①、②の細胞は減ります。
そこで着目したのが④老化状態にない細胞。
これは老化へ向かう運命を逃れた細胞ではないのか?
と考え、④で特徴的に発現していたEFEMP2を調べたわけ。
EFEMP2 はフィブリン-4と呼ばれる、コラーゲンやエラスチンの形成に重要な
タンパク質をつくる遺伝子です。
EFEMP2を抑制した結果、老化細胞の特徴を示す細胞が増えたとのこと。
EFEMP2が老化への運命を回避する鍵となるのでは?!
と考えたわけですね。
なお、EFEMP2欠損によって、エラスチンを作れなくなるという
ことがわかっています。
エラスチンは真皮の立体構造を維持するために重要な物質で、
コラーゲン同士をつなぎ固定する役目を担っています。
となると、フィブリン-4自体が老化を抑制している可能性と
エラスチンが老化を抑制している可能性も考えられます。
EFEMP2を抑制したものにこれらを添加する実験も
行われていれば、はっきりしたんでしょうけどね・・・
老化細胞は放っておくと、感染するかのように増えていく、
老化細胞を除去すれば、寿命が劇的に伸びる、
ってことが明らかとなっているので、
いかに老化細胞を増やさないか、もしくは減らせるかってのは
とても重要なことです。
EFEMP2が老化に関わっているってことで、
これを活性化できれば老化細胞を増やさないようにできる
ということが示唆されたわけです。
じゃあ、何がEFEMP2を活性化できるか?
というところまでは話が進んでいないので、
今後の研究待ちってことになるのかな。
老化細胞を増やさない方法としては、抗老化ホルモンである
クロトーを増やすってのが現実的で、
クロトーを模したペプチドを含んでいるクロデシンは
だいぶ先を走っている原料なんだなーと思った次第です。
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