未来もこれさえあればいい。
資生堂が老化細胞を除去する成分としてアスペルギルス/ツバキ種子発酵エキス液を
見出したって発表が去年にあって、その原料を使った製品はすでに市場に投入されています。
いったいどんな文言で販売するのかなー
と気になったので調べてみました。
まあ、さすがに「老化細胞を除去する」なんて謳えるわけもないですから。
で、書かれている文言は「私は除去する」
この研究背景を知っていれば言わんとするところは分かりますが、
知らなければ意味不明でしょう。
莫大な研究費と時間をかけ、Cellという学術論文にも掲載されるくらい
凄いことなんですけど、それを伝える手段がないってのは何とも不憫な話です。
普通に生きていたら論文なんて読むことはないですからねえ・・・
対面販売するから、販売員が説明すれば・・・ってメッチャ大変よ?
老化細胞を除去することの意義、意味を伝えなきゃいけない。
老化細胞とは何か?ってとこから説明する必要があると思われます。
老化細胞ってのは老いた細胞ってわけではなくて、分裂を停止した細胞のこと。
細胞は無限に増えることはできず、その回数をテロメアが管理しています。
分裂回数の上限に達した細胞は増えることはできなくなります。
これは正に文字通り老いた細胞ですが、分裂を停止するのはそれだけではありません。
紫外線などの外的要因でDNAに致命的なダメージがあったり、細胞分裂の際に
DNAのコピーミスなどがあった場合も細胞分裂が停止します。
つまり、老化細胞ってのは若いときだって存在するんです。
なぜ、分裂が停止するかというと、本来とは異なるDNA、遺伝情報をもった細胞
ってのは「異物」になるわけです。
この異物が分裂を停止せずに増え続けた場合、それはガン細胞と呼ばれます。
老化細胞とガン細胞は同じもので、増えるか増えないかの差でしかありません。
老化細胞はガン化を防ぐための重要な仕組みであるともいえます。
この老化細胞は処理されるべきもので、老化細胞は「ここに処理すべき細胞がある」
と免疫細胞にアピールをします。
それによって、免疫細胞を呼び込み処理されるんですが、
加齢によってその処理が追い付かないってことが起こります。
免疫細胞を呼ぶ物質ってのは炎症誘発物質でして、
放置すると炎症が起こります。
隠れ炎症なんて呼ばれるものなんですが、その影響で
老化細胞の周りの細胞は炎症によってダメージを負います。
その結果、細胞分裂をストップする・・・つまり老化細胞になります。
このように老化細胞は周りに感染するかのように広がっていきます。
まるでゾンビのような状況から、老化細胞はゾンビ細胞と昨今では
呼ばれています。
老化細胞を完全に除去することができれば、理論的にはヒトは200歳は生きることができる
とさえいわれています。
あくまで理論的には、ですが。
ここまで説明して、ようやく「老化細胞を除去する」ってことの有用性を
理解できると思われます。
まあ、なんとなく凄そうでも物は売れるんしょうけども。
販売員もおそらくですが、メカニズムを理解するのは少々難があるかと。
使われている原料はツバキ種子からオイルを取った搾りカスを
麹菌で発酵させたもの。
今まではゴミとして捨てていたものを有効活用することでSDGsの観点からも
素晴らしい取り組みです。
また、発酵のスペシャリストであるヤヱガキ酒造と共同開発している点も
アピールポイントではあります。
ツバキ種子発酵液の効果は「メモリーT細胞を誘引するCXCL9の発現を高める」
なんですが、まあ字面だけ見ても意味不明だと思われます。
メモリーT細胞ってのはようは免疫細胞の一種で、CXCL9はそれを誘導するもの。
上述したように老化細胞は自身を処理してもらうための
シグナルを発するわけですが、そのシグナルを強めるってわけ。

CXCL9の量を直接調べたのか、mRNAを調べたのかはしらんけども、
正直誤差なのでは・・・ってくらいの発現増を示しています。
まあ、これくらいが丁度よいとは個人的には思います。
CXCL9は老化細胞の感染に一役買っているものでもあるわけで。
炎症を誘発するものでもあるわけです。
老化細胞を除去しようとして、老化細胞を増やしていたら
本末転倒ですからね。
現段階では老化細胞が有意に除去されたってデータは公開されていません。
もちろん研究は引き続き行われており、将来的には提示されるとは思いますが、
どうなんでしょうね?
あー、やっぱりぼんやりと凄そうってくらいのほうがよいか。
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