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アシルセラミドが多重層リポソームの安定性を向上させる

コスト的に現実的なのかねえ?

ノエビアの研究なんですが、一言で言ってしまうと、アシルセラミドを混ぜることで

多重層リポソームの安定性が劇的に高まったって話。

 

アシルセラミドの性質上、そりゃそうなるよねと思うのですが、

1つずつ説明していきましょうか。

 

リポソームとはなんぞや?

リポソームとはリン脂質の二重膜から成る微小な球体のことをいいます。

昨今は二重膜構造をしているならリン脂質である必要はなくて、

たいていは水添レシチンが使われます。

 

水添レシチンは親水基と疎水基を持つ、いわゆる界面活性剤。

細胞間脂質では、リン脂質の代わりをセラミドが担っており、

水相、油相が交互に重なるラメラ構造をとっています。

 

この二重膜が何重にも重なった状態が、多重層リポソームになります。

 

サイズは10~100nmくらいでリポソーム化=ナノ化といっても過言ではないです。

リポソーム化って表現的に限りなく黒に近いので、それを濁す意味でナノ化って

いうほうが一般的です。

 

小さいから浸透しやすいってのもありますが、構造上細胞間脂質との親和性が高く、

ラメラ層の奥まで浸透していきます。

 

アシルセラミドはセラミドの一種でセラミドEOP、セラミドEOSがそれに該当します。

普通のセラミドより脂肪酸の長さが長く、さらにリノール酸がくっついて

倍くらいの長さになっています。

そのため、ラメラ層をまたぐため、楔となってラメラ層の安定性に寄与しています。

逆に言えば、アシルセラミドがないとラメラ層が横ずれして、安定性を欠くというわけ。

 

多重層リポソームはラメラ層とほぼ同じと考えられるので、

アシルセラミドを混ぜれば安定性が増すのでは?ってやったら

実際に安定性が劇的に増したと。

 

その結果、膜数が増加し、リポソーム化の割合も増加したとのこと。

 

ノエビアからの研究発表だったわけですが、ぶっちゃけすでに行われているんよね。

Phytopresome™ Cera-Ⅴ、日本精化のセラミドプレミックスで、

セラミドEOPを含む5種類のセラミドと水添レシチンからなる原料です。

 

まあ、セラミド20%に対し、アシルセラミドは0.001%ではなるんですけどね。

 

今回の発表ではどのくらいの割合で使用するのか記載はありません。

肝の部分なので当たり前ではあるのですが・・・

 

この技術には致命的な欠陥があるんです。

そう、アシルセラミドは滅茶苦茶高価な原料。

1億円/kgすると言われいます。

 

リポソームの安定化のためだけに、気軽に出せる金額ではないです。

 

アシルセラミドが安定的に安く供給されるようになるか、

疑似的なアシルセラミドの開発でもされない限り、

実用化は現実的ではないかなーと思います。

 

Phytopresome™ Cera-Ⅴのアシルセラミドの量で充分ってのであれば、

新しい発見でもなんでもなくなりますしねえ。

 

 

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